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親学推進議員連盟会長 安倍晋三様
     同事務局長 下村博文様

親学推進議員連盟への要望書

特定非営利活動法人アスペ・エルデの会
理事長 辻井正次


 私どもは、特定非営利活動法人アスペ・エルデの会と申します。1992年より発達障害児者の支援を進めている当事者や家族、支援者からなる団体です。当事者や家族とともに、当初より、現在の代表である辻井正次(中京大学教授)と杉山登志郎(浜松医科大学特任教授)を中心に活動を進めてまいりました。

 すでに、議員連盟の諸先生方におかれましては、2004年の発達障害者支援法の成立を超党派で実現した過程に関わっていた議員の先生方もおられ、一定の発達障害に関する知識と理解をお持ちだと考えておりました。しかし、法律の成立から7年を過ぎ、再度、発達障害に関する正しい理解をお持ちいただく必要があるのではないかと考えております。

 大阪維新の会大阪市議団からの「家庭教育支援条例案」が、発達障害があたかも子育ての仕方等の環境的な要因から生じるかの誤解を広げるような内容で、社会的に科学的な理解のなさから多くの批判を受け、撤回することになったのはご存じのとおりです。そして、その素案は親学推進協会から発していることを同協会のホームページから知ることができます。
 そして、今回、要望書を差し上げることになった契機にもなるのですが、すでに大阪維新の会騒動で批判を浴びているのと同様の発達障害について科学的根拠を持たない内容が5月24日に国会内で開催された貴議員連盟の会合で検討資料として扱われたことを知り、非常に残念に思っております。現在、学術的な知見は国際的な研究も国内の研究も研究情報については一般でも閲覧できます。現在ある、発達障害の理解の標準的なものを知ることは難しくなく、親学推進議員連盟の資料が科学的根拠を欠くことを確認することは、容易なことであるはずです。
 また、該当する資料に代表の辻井や杉山の名前を出されておりますが、私どもはまったく関与しておりませんし、名前を出されることも快く思っておりません。同日の会合の資料をすべて議員連盟として破棄していただけますと幸いに存じます。

 家庭教育の重要性を再認識する取り組みは重要なものですが、世界的な発達障害研究の動向に反するエビデンスのない内容をもとに、発達障害の予防を唱えるのはまったくのナンセンスであります。また、「伝統的な子育て」が発達障害にとっては好ましくなく、かえって子ども虐待を生み出しやすいと私どもは考えております。仮に、一般の子どもにとってよかったとしても、発達障害の子どもにはよくないため、「伝統的な子育て」とは異なる観点で、国際的にも標準的な支援技法である、ペアレントトレーニングなどのエビデンスのある家族支援技法の開発に取り組んできています。
 貴議員連盟の国会議員の先生方には、恣意的な方向に解釈された事実と異なる内容を解説する学者等ではなく、国内外の学術論文などの形でエビデンスを示した研究に携わっているような発達障害支援の専門家から、直接に支援の実態を学んでいただきたく要望いたします。

 現在の知見では、先天的要因で100%自閉症が説明できないのは正しいのですが、「自閉症者はいつ自閉症になるのか」という視点から考えると、現在、環境因子も含めて多くの自閉症仮説がありますが、全てが出生前の胎生期のイベントに基づくものです。出生後のある種の環境が発達障害の増悪因子になることはあっても、生物学的な原因とする仮説・証拠はありません。出生段階には生まれ持っている障害兆候・特性を早期に見出し、子どもの特性にあった支援・子育てをしていくことが大切で、(実体不明で根拠のない)「伝統的な子育て」という空想上の勝手なイメージで、発達障害の子どもたちのことを考えることはできません。ましてや、それで発達障害を予防することはできません。二次障害など憎悪の予防には、(「伝統的な子育て」ではなく)早期の発見と早期の支援こそが必要です。

 家庭教育の支援には、子育て世代の貧困対策や、コミュニティの再生、産業構造の中での第一次産業の再構築など、家庭の中での若い親たちの子育ての問題よりも、構造的な問題が優先されるべきだとも考えられます。どうか政治家の視点で、(発達障害の家族を子育ての仕方が悪いという過去の魔女狩りの復活をするのではなく)、科学的知見を踏まえて、よりよい社会を構築していく意味で、本来検討すべき課題に向けて努力していただきたいと切望いたします。